2015年12月20日日曜日

12・5 国連・人権勧告の実現を! 集会での発言

12・5 国連・人権勧告の実現を!
集会での発言

【特別報告】

・国連・表現の自由特別報告者の来日問題について
  藤田早苗さん(英国エセックス大学人権センターフェロー)

【集会発言】

・「国内人権機関と個人通報制度について」
  伊藤和子さん(弁護士/ヒューマンライツ・ナウ事務局長)

・「人種差別撤廃基本法制定に向けて」
   師岡康子さん(弁護士/外国人人権法連絡会)

・「安倍政権の国連人権勧告は守る義務なし」問題 
  寺中誠さん(東京経済大学教員)

【テーマ別アピール】

・沖縄・辺野古の問題
  青木初子さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)

・原発再稼働・放射能と子どもの問題
  黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)

・リプロダクティブヘルス・ライツの危機的状況
  西山千恵子さん(大学非常勤講師)

・「高校無償化」制度からの朝鮮学校除外問題について
  金奈奈さん(朝鮮大学校学生)

・精神障害者が直面する問題
  山本眞理さん(全国「精神病」者集団会員)
        (世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク(WNUSP)理事)

・教育現場への政治介入
  新井史子さん(東京・教育の自由裁判をすすめる会)

=====

・国連・表現の自由特別報告者の来日問題について
  藤田早苗さん(英国エセックス大学人権センターフェロー)

 こんにちは。イギリスから一時帰国中の藤田早苗と申します。
 本来でしたら今ごろは国連「表現の自由」に関する特別報告者のデビット・ケイさんが今週火曜日1日から8日まで調査をしているはずだったんですね。私はずっとその準備に携わって、日本調査の際にはアテンドをし、また時間外通訳などもお手伝いするつもりで帰ってくる予定だったのですが、皆さんご存知のように日本政府はこのケイさんの公式訪問を、日程の調整が不可能であると訪問予定直前に突然キャンセルしました。公式訪問予定2週間前のドタキャンでした。
 国連人権理事会には41のテーマで特別報告者制度が許されています。そこに通報制度があります。2年前、日本で秘密保護法が重大問題として盛り上がっていた時、私も秘密保護法の危険性を通報制度を利用して英訳して伝えたのです。デビッド・ケイさんの前任者であるフランク・エルードさんが担当者でしたが、この危険性を理解し、声明として日本政府に対して発表しました。これに対して、安倍さんは、「国連の方はだいぶ勘違いされているようですね」と国会でいわれたそうですね。さらに昨年7月にも人権理事会では、秘密保護法がかなりあいまいであり危険であると警告しています。
 こういったいきさつをすべて受け継いで、デッド・ケイさんは調査されようと準備していました。日本の報道の自由の自由度が、それまで世界で11位だったのが51位に大きく順位を下げていることもよくご存知です。
 人権理事会ではNGOがステートメントを発表できる時間があります。特に表現の自由に関しては世界中多くの国で関心が高く、たくさんの人たちがこのステートメントを発表する時間を欲しがる、読みたがるのですがなかなかできないのです。いつも、時間が無くなって短く切ってください、などといわれるのですが、そんな中にあって日本の状況は大変関心を持たれているわけです。ジャーナリストが拷問にあってひどい状態に置かれたり活動が許されないでいる国があるなど、たくさんの国に関与を求められている中で、あえて日本を調査対象に選んでいただいたのです。これは正式に7月に日本政府に要請があり、8月には政府は暫定的にOKの返事をだし、10月に正式にOKを出しているわけです。その矢先のキャンセルですから、ケイさんもがっかりされて、失望したと言われました。ケイさんはカリフォルニア大学の教授の仕事をされながら、国連でボランティアでやっていらっしゃる方です。
 政府は日本の、報道・表現の自由に問題があると公言したようなものです。公式訪問できるのは年に2か国ほどで、ドタキャンは他の調査を希望している国にも大変迷惑を及ぼしています。せっかく日本を優先してくださっていたというのに。
 先日ヒューマンライツナウの伊藤さんたちが、人権人道大使と面談されて、今回のキャンセルについて誰との調整が難しかったのか聞いたのですが、教えてくれなかったそうです。別に何十人にもあう必要はないのです。それが調整できないというとんでもないいいわけです。今後も惜しみなく協力すると言われたそうですが、調査の日程設定を早くするべきです。政府の都合で延期したのですから積極的に調整するべきなのに、明確な返事はない。政府が協力しなければこの調査は実現不可能なのです。
 先日、オーストリアジャーナルの記者からケイさんはインタビューを受けたそうですが、日本再調査の予定については、行きたい国も他にもあるし、わからない、難しいと答えていました。
 日本政府は国際的に評価を下げました。ロンドンの国際人権団体アーティクル99が声明を出しましたが、事務局長がその中で「日本が調査を受け入れないというのはビックリした」と表明していました。私の周囲の人びとはみな、まるで日本は独裁国家のようだと反応しています。実際そうなってきているようなものです。それを自ら示してしまった。名誉挽回のためにも、早急に調査要望をするべきです。
 日本のメディアも、今朝の毎日新聞が社説に取り上げてくれていますが、まだまだ少ない。もっと大きく取り上げられるべき大問題です。市民団体の皆さん方もぜひアピールをよろしくお願いします。

=====

・「国内人権機関と個人通報制度について」
  伊藤和子さん(弁護士/ヒューマンライツ・ナウ事務局長)

 デビッド・ケイさんが来られなくなったということを聞いて、非常に驚いています。このようなドタキャンていうのは、本当に国連の人権メカニズムを軽視していることの表れではないかと思って、何としても、このようなことが繰り返されないようにしなくてはならないと思っています。
 特別報告者制度は昔からあったんですが、最近、日本に来たいという特別報告者が増えているんですよね。これは何故かというと、ひとつは、民主党政権のとき唯一実現した改革なのですが、すべての特別報告者を受け入れますという、スタンディングインビテーションというのを日本政府が出した。これで、すべての特別報告者を受け入れなくてはならなくなったということ。
 もうひとつは、日本の人権状況が非常に悪化しているということではないかと思っています。まず、メディアの報道に対する規制が強まり、言論の自由が脅かされている状況になっていると思います。国際社会も日本の人権状況に対する懸念も深まっている。そうした中で、国連の特別報告者が日本に来たがっているのですが、それに反比例して、日本政府の国連勧告に対する姿勢が非常に後ろ向き、いやむしろ敵対的なものとなっています。
 私も、ヒューマンライツ・ナウとして、福島原発事故後、健康に対する特別報告者に福島現地に行っていただいて、被災者の実情を知っていただいて、本当に重要な勧告をしていただきました。
 それから、2013年5月だったんですが、「国連特別報告者の勧告は個人見解だから従う義務はない」というのが日本政府の見解で、本当に許しがたいことだと思っています。そして、2013年6月、今度は従軍「慰安婦」の問題で、閣議決定で、「国連の人権機関、条約機関からの勧告も拘束力がないので、日本政府は従う義務はない」と言い始めてしまった。わざわざ閣議決定をして言っているという許しがたい状況です。従軍「慰安婦」に関する発言で、日本政府が国際社会のひんしゅくを買っているというのは皆さんご存知の通りだと思います。
 こうした日本政府の姿勢は憲法98条第2項の、日本政府の義務であるところの「条約の誠実遵守義務」に反することは明らかです。これは単に国連の勧告に背を向けるというだけでなく、人間の生き死に、私たち一人ひとりの人権に関わることなんですね。
 たとえば原発事故に関しては、社会権規約委員会が、既に2001年に、「原発の安全性が確保されていない、情報が公開されていない場合は、それをただすべきだ」という勧告が出ているんです。それを受けて、ちゃんと改革をしていたらですね、あの事故が起きたでしょうか。そして、あれだけの人が土地を奪われ、人生を台無しにされるようなことがあったでしょうか。
 2014年には、自由権規約の勧告が出されました。死刑囚の事件に対する情報アクセスの権利、死刑囚に証拠開示しなくてはいけないという勧告が出されました。しかし、それは実現しなかった。私の依頼者なんですが、奥西勝さん、今年の10月、証拠開示もなく、再審の権利を奪われたまま死んでしまった。
 このように、日本政府が国連の勧告を無視したままであるため、人の命や人権が奪われていくわけです。本当にこうしたことを許してはいけない。私たち一人ひとりの問題だと受け止めて欲しいと思います。
 前置きが長くなりましたが、だからこそ、国連勧告を実現するための制度が必要だということです。国連から何度も何度も指摘されている二つのシステム。ひとつは、個人通報制度ですね。多くの国が人権条約の選択議定書に批准しています。人権規約にも、女性差別撤廃条約にも選択議定書というものがあります。それに基づいて、人権侵害を受けた人は、たとえ最高裁まで行って救済されなくても、国連に対して通報できる。そして国連から、「これは人権条約違反だ」という結果をもらう。その勧告を国が尊重して、人権が回復される。そうやって、人権状況が改善した個人もいっぱいますし、国もいっぱいあるわけです。世界の多くの国がこれに批准している。モンゴルも韓国もフィリピンも批准している。しかし、アジアの中でも異例で、日本は批准していない。先進国はほとんどの国は個人通報制度を批准している。もしくは、地域の人権機構で個人通報制度というものがあるのですが、日本は本当に異例な状況で、そのようなシステムがまったく認められていない。一人ひとりの個々の人間の人権を国連に訴えて、解決してもらうことができない。これは重大な問題だと思います。2009年に民主党政権が個人通報制度を採択するという公約を出したのですが、それが実現しないまま今日に至っていますが、そもそも1970年代後半に、たとえば人権規約を採択する段階から、これは議論されていて、日本政府は少し待ちましょうと言っていて、既に40年以上が経っているわけです。
 もう一つは、1990年代にですね、人権会議で、政府から独立した国内の人権機関をつくることが提唱されて、多くの国でつくられました。ほどんどの国は人権機関を持っているのに、日本は持っていないわけです。たとえば、韓国、タイ、マレーシアにもあります。ずっと私たちが民主化を支援していた独裁国家だったミャンマー。最近、民主化されて、人権委員会がつくられました。あちこちに行って、人権状況を調査して、問題があれば改善するということを実現しているんです。日本は人権先進国だと名乗っていましたが、いつのまにか、アジアの国からも遠く遅れてしまっているわけです。
 そして一番困るのは、国際社会の人権スタンダードから日本がどんどん離れていき、ガラパゴス化してく。そういうことですね。これは単に国際社会の中で日本の地位が低下するだけでなく、一人ひとりの私たちの人権が国際基準で尊重されない、命と生活が保障されていかない、ということではないかと思います。これ以上、人権侵害がまだまだ起きていくことが懸念されますが、それを何とか食い止めていくためにも、日本政府には国連勧告を守らせなくてはならない。そして二つの制度、個人通報制度と人権機関をきちんと実現させてメカニズムを作っていかなくてはならないと思います。そうした中、私たち一人ひとりが声をあげて、メディアにも取り上げてもらって、この人権を守るということ、そして人権勧告に従い、制度を改革していくということを皆に伝えていくということが、前にも増して重要だと思います。大変な中ではありますが、一緒に頑張っていきましょう。

=====

・「人種差別撤廃基本法制定に向けて」
   師岡康子さん(弁護士/外国人人権法連絡会)

 今年5月22日、参議院に野党議員らにより人種差別撤廃施策推進法案が提出され、8月6日には審議入りしました。先の国会では採決まで行きませんでしたが、継続審議となりました。
 この法案は、第1条に人種差別撤廃条約の理念に基づき、と明記されており、人種差別撤廃条約上の義務を国と地方公共団体が実際に履行するための基本法です。政府が差別を違法と宣言し、差別の実態調査を行い、内閣府に専門家等による「人種等差別防止政策審議会」を新設し、差別撤廃にむけた方針を定め、実施状況を国会に報告するという枠組を定めたものです。
 本来、20年前、1995年に日本が人種差別撤廃条約に加盟した時点作られるべき法案です。
 条約の求めている一番基本的な義務は2条1項本文に書いてありますが、「締約国が人種差別撤廃政策をすぐに行う」ということですが、政策自体ないので、まず重大な政策であると国が認めて、ここからスタートするという本当に初歩の初歩です。
 それでも、戦後初めての日本ではじめて人種差別撤廃に正面から取り組む法案が提出され国会で議論されたこと、重要な法案だからと継続審議になったことは、大きな第一歩です。
 ヘイトスピーチがここ数年悪化したのに対し今日お集まりの皆さんなど多くの人たちが様々な場所で抗議をし、社会問題化したこと、そしてもうひとつ、今日のテーマである人権勧告、ちょうど去年の7月と8月にヘイトスピーチをはじめとする人種差別対策をしろと厳しい勧告が出されたことが大きな後押しになっています。
 しかし、人種差別撤廃委員会の勧告は、実際は2001年2010年2014年の3回だされ、骨子自体は変わらない。私は2010年審査と2014年審査に行きましたが、すでに2010年審査のときには京都朝鮮学校襲撃事件が行われるなど人種主義団体のヘイトスピーチは各地で行われていました。
 それを私たちは報告し、勧告でもヘイトスピーチに関して、
①ヘイトスピーチを禁止する法整備をすること、②現行法を効果的に実施し、加害者を処罰すること、③反レイシズムキャンペーンを行うこと、④公人の差別発言を止めるよう公務員教育を行うこと、④人種差別に特化した人権教育を行うこと
など今回と同様の勧告がでているのです。
 しかし、政府はそれを文字通り一切無視してきました。わかりやすい例としては、2010年に勧告が出されたあと、2013年1月に政府は勧告をうけて次の報告書を提出したのですが、そこでは、前回の2010年の勧告について一切ふれられていないのです。
実はこれはヘイトスピーチ対策に限定されたことでなく、勧告全体に対してです。審査の場でも委員たちは口々に怒りを表明し、2014年の勧告の冒頭
「委員会は、締約国が次回の定期報告書において本文書にふくまれるすべての勧告に答えられるよう強く勧告する」と書かれています。
 差別主義者たちの行うヘイトスピーチ自体、政府がこれまで行ってきた在日朝鮮人に対する差別政策を反映しているものと考えますが、ヘイトスピーチがここ数年で急激に悪化したことについて、国連勧告との関係でいえば、2010年の時点で勧告を行い、問題を認識していながらあえて放置し、黙認してきた政府に責任があります。
 それなのに、政府は、ヘイトスピーチをあたかも民間の差別主義者の問題に切り縮め、人種差別の禁止を宣言するというささやかな法案についてすら消極的で、自民党の一部は人権弾圧法だと反対している人すらいます。継続審議にはなりましたが、今のままでは簡単には成立しません。
 成立させられるか否かは、私たち市民の力にかかっています。現在開かれている地方議会の12月議会ではまだ各地で法整備を求める意見書が採択されつづけており、各地でとりくまれている方がたに心から敬意を表します。さらに、地方自治体での差別撤廃宣言や条例づくり、地方での差別の実態調査などなど、それぞれの場でできることはいくらでもあります。
 国が差別撤廃に取り組む義務があるのです。すでに日本はこの義務を負っていて、それをサボっているのです。その義務を果たさせるのは私たちの義務です。声を上げ、実際に行動し、ぜひ法案を成立させましょう。

=====

・沖縄・辺野古の問題
  青木初子さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)

ハイサイ グスーヨー チュイ ウガナビラ
 みなさん、こんにちは。ただ今、ご紹介頂きました沖縄一坪反戦地主会の青木です。
 皆さんご承知のように、翁長知事が国連人権理事会に行きまして沖縄辺野古の基地建設強行によって沖縄の人々の人権と自己決定権がないがしろにされているというアピールをしました。まさにその通りです。今、沖縄辺野古キャンプシュワブのゲート前でウチナンチュを含めて、日本からも外国からも多くの人々が座り込みをして基地建設を進めるなという抗議行動が展開されております。しかし、皆さん、その弾圧のためにここ東京の警視庁まで動員されて、100数十名が牙をむき出して非暴力の市民に襲いかかっています。本当に腹が立ちます。そして暴力行動がエスカレートし、けが人が出ています。5人がかりで襲い掛かり気絶するほどの乱暴を働き、肋骨にひびが入るほどの暴力をふるい、海では海上保安庁がカヌー隊を海に引き落として、海水を飲ませると言うようなことが行われています。
 私たちはこの沖縄辺野古の新基地反対の闘いは、沖縄の尊厳をかけた闘いであり、日本の民主主義を問う、そして地方自治のあり方を問うそういう闘いであると思います。10月13日、翁長知事は、前知事の埋め立て承認取り消しを行いました。その承認取り消しに対して、沖縄防衛局が私人として、法を歪曲し、行政不服審査法を使って、同じ穴のムジナの国土交通省に執行停止の申し立てを出すという不当極まりないことをやった挙句、その国土交通省が執行停止をした上に、沖縄県知事の権限を奪う代執行の手続きを始めました。そしてその裁判が今、行われています。私たちはこのような日本政府のやり方は、沖縄に対する差別であり、辺野古の新基地建設強行は沖縄の人々の人権を損なうものであり、断じて許しがたいと満空の怒りで抗議をし、その辺野古の新基地建設を阻止する闘いを多くの人々と推し進めていきます。絶対に負けない!屈しない!そのことを訴え、みなさんのご支援をお願いします。
 さらにインターネットにおける差別書き込みまで広がっています。兵庫県の6期も務めた市議会議員という公的な人間が、抗議行動をする市民に対して「機動隊の鉄板の入った靴でけり上げろ」と言うような書き込みをし、また、岐阜県の県庁職員が「バカな沖縄県民だまっていろ、我々は粛々と基地建設をすすめる。」と言う風な書き込みをしており、また2,3か月前には、明らかに米軍基地から映されたと思われる抗議行動をする市民の映像が流されました。それに対して、「モンキー」と書いてあるんです。沖縄に対する日米による差別、尊厳を踏みにじるこのようなことを、私たちは断じて許しません。先ほどの報告にありましたが、沖縄に対する差別、沖縄新基地を強行する日本政府に対する抗議行動を皆さんと共にすすめて、一人一人が、自分の職場、自分の居る場所でどうか声を上げて、私たち沖縄県民と共に新基地を作らせない声を共に共にあげていただけるよう心から訴えて私からのアピールとします。ありがとうございました。

=====

・原発再稼働・放射能と子どもの問題
  黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)

 福島は今絶命の淵にあります。放射能汚染と被曝問題の否定、被爆者の救済施策が進み、欺瞞が横行しています。ついこの間の11月30日に第21回被爆者県民健康調査検討委員会の発表がありました。甲状腺がんがある、あるいは疑いがある子どもたちがついに151人と数えられました。これは事故当時18歳未満だけです。それ以上の上の子どもや他の病気は入っていません。福島県以外の子どもたちはどうなっているのでしょうか?少し前、北茨城市の独自の調査で3人の子どもたちが、甲状腺がんだと分かっています。
 今、はっきりわかっていること、大切なことは、不安定であるということで、放射線被曝の不安や懸念を押しつぶすのではなく、被曝を回避するためのあらゆる施策を早急に取ることです。
 被爆者は今、避難の権利、子どもたちが安全なところで教育を受ける権利などをはく奪されています。避難の解除と帰還施策が強引にあるいは巧みに進められています。福島から避難している人、あるいは子どもたちに、安全な空気、クリアな空気、生活支援、健康診断の充実とその継続が保障されなくてはなりません。これは普遍的で基本的な人権の問題であります。
 今に至る甚大な被害でありながら、なぜ原発の再稼働なんでしょうか?国も県も原子力規制委員会も全くの無責任体制で、自己の責任を擦り付け合う関係にあります。原子力規制委員会では一切、避難の審議はしないとなっています。福島をそのままにしながら、再稼働に突っ走る安倍政権は、人間の命、自然界すべての命を冒涜し、ないがしろにして、原子力マフィアにする最悪の悪徳政権です。
 福島県民は憲法25条の生存権を侵されています。生存権とは人間が人間らしく、当たり前に生きる権利です。福島県民はこの権利を奪われているのです。
 この頃、私は福島とアウシュビッツということで考えることがあります。福島は過去形ではなく、現在進行形であること、福島の悲劇は実際はいまだ全体が分からず、むしろこれから先、明らかになってくるだろうという違いはもちろんあります。では、福島に絶命はないのだろうか。それはニュースに出ていて、あるのではないかと私は考えるのです。なぜなら、安全だから福島に帰れというキャンペーンが圧倒的だからです。福島県民に不安を語れる自由はあるのだろうか?この自由はありません。人々は普通の顔をしなければ地域では暮らしにくく、孤立と分断への怖れを抱いています。アウシュビッツと同じだというとお叱りを受けるかもしれません。でも今そんなことを考えています。
 そしてアジア侵略と「慰安婦」問題、沖縄、アウシュビッツなどなどから示されていることは、厳しくても真実に向き合わない限り、本当の回復はますます遠のき、そのことによって被爆者の人間としても名誉回復と救済はいつまでもなされないということではないでしょうか。
 さて、脱原発の象徴であり続けた検察庁前のテントが、強制執行の危機にさらされています。福島も私たちもお世話になったテントが、国の暴力によって破壊されようとしています。けど私たちはきっとあきらめないし、黙ることはありません。これはもう爆発してしまったところに住む者にとって、それしかないからです。放射能はやすやすと国境を越えます。自分の国の安全だけで済むことではありません。隣人を犠牲にしてなり立つ文化というものを拒否したいです。国境を越えたネットワークで、原発はもうたくさんだ、いらないと叫ばないと、間に合わないと思っています。それぞれの違いを認め、弾力あるネットワークで、あきらめずに世論に訴え続け、共に頑張っていきましょう。行動していきましょう。   

=====

・リプロダクティブヘルス・ライツの危機的状況
  西山千恵子さん(大学非常勤講師)

「女性は最後の植民地」という言葉があります。いま、女性の身体そのものが、まさしく「子どもを産む機械」として植民地にされようとしています。
 リプロダクティブ・ヘルス・ライツとは、子どもを持つか、持たないかといった、性と生殖に関する健康が保障され、自分の身体を自分で決定する権利のことをいいます。しかし、少子化の危機が叫ばれるこの時代、自分の身体の自己決定権という、身体の安全や自由に関わる最も根本的な人権が政治によって脅かされている状況です。
 まず政治家が率先して、女性に妊娠・出産の圧力をかけています。女性を「子どもを産む機械」にたとえた元厚労大臣の発言ばかりでなく、話題になった女性議員への性差別ヤジも、「結婚したらどうか!」「産んでから」「産めないのか」と、妊娠・出産を迫る怒号ばかりでした。菅官房長官も芸能人の結婚発表に際し、「国家に貢献、たくさん産んで」と、まさに「平成版・産めよ殖やせよ」の発言をしています。
 内閣府の少子化対策として、文科省が今年高校1年生に配布した保健の副教材にも、「正しい科学」と称し、女性の妊娠する力が22歳以降、はっきりと低下するという改ざんグラフが掲載されました。この副教材は他にもデタラメなグラフがあり、教育の名のもと、インチキな数字によって、女子高校生たちを若年での妊娠・出産に誘導するものです。この傾向は全国でも広がりつつあり、安倍政権のむき出しの少子化対策の中で、リプロダクティブ・ヘルス・ライツは、危機的状況にあります。女性の非正規化・貧困化が進み、自分の身体の決定権すら確立していない状況の中では、現政権の女性活躍推進法など空疎に響くだけではないでしょうか。
 安倍総理も国会で女性議員を狙い撃ちして複数のヤジを飛ばしていました。垣間見えるのは女性への憎悪と蔑視です。男性議員たちによる女性へのヘイトスピーチを挙げればキリがありません。人権が尊重される社会を作るために男性中心の政治と政策を変えていくことがぜひとも必要です。

=====

・「高校無償化」制度からの朝鮮学校除外問題について
  金奈奈さん(朝鮮大学校学生)

 5年前の2010年4月、いわゆる「高校無償化法」が施行されました。この法律は、日本で学ぶ外国人も含む「すべての子供たち」が平等に就学支援を受けられる制度として、1945年以降、朝鮮学校に対する制度的差別を行ってきた状況下で、朝鮮学校に通う学生たちに対する支援としては画期的な内容でした。
 「高校無償化法」が施行された当時、私は高校二年生でした。このことを知ったときは、その意味が良くわかりませんでしたが、自主運営のウリハッキョに通わせるために朝早くから夜遅くまで働いてくれている、親の負担を少しでも軽く出来ると喜んだことを今でも鮮明に覚えています。
 しかしその喜びはつかの間のものでした。就学支援金の支給対象となっていた外国人学校の中で、唯一朝鮮学校に通う生徒たちだけは法律施行時には適用されず、その後も朝鮮半島情勢によって一喜一憂する日々が続き、ついに2012年、第二次安倍政権が発足したのと同時に「改悪」された省令によって朝鮮学校は適用対象外となりました。
 この間、私たちは勉強や、部活、友だちとの楽しい時間を削って街頭に立ち、署名活動を行いました。それでも何も変わることはなく、卒業していく先輩たちは口をそろえて「ごめんな、お前たちにもっと重い荷物を背負わせてしまって。高校無償化実現してやれなくて本当にごめん」と悔し涙を流しながら卒業していきました。私もその中の一人です。
 私はこのような矛盾を自分の手で変えたいと思い、朝鮮大学校へと進学しました。
 大学では先輩たちが、高校無償化適用のために何かすることができないかを考えた結果、大学生たちが文科省前で無償化適用を訴える「金曜行動」を2013年5月からスタートさせました。最初は数人から始まったこの活動が、オモニたち、日本の支援者の方たち、そして高校生たちもともに抗議の声をあげる活動になり、その年の年末には1000人を越える人たちが集まるまでになりました。
 一方、この間にも高校無償化への日本政府の態度は変わらず、ついには高校生たちを原告とした裁判を提訴するという異常な事態になりました。大阪、愛知を皮切りに、現在全国5箇所で裁判が行われています。
 高校生を法廷に立たせざるを得ない状況の前に、私たちはこの現状を世界に広く訴えかけようと、2014年7月、国連自由権規約委員会日本国審査が行われている、スイス・ジュネーブに代表を送りました。現在、人種差別撤廃委員会で2010年、2014年、社会権規約委員会で2013年に朝鮮学校を高校無償化から除外することに対する勧告が出されています。このように国際人権法に照らして違法であり、不当であるという勧告に対して、日本政府は依然として態度を変えようとはしていません。そして、私のように高校在学中にその思いを達することができず卒業していく学生が増えていくばかりです。
 私は、この活動を通じて、朝鮮高校生を高校無償化から除外するという問題は純然たる人権問題であり、これは人権後進国と揶揄される日本の人権状況を表しているものであること、この問題を解決することが日本に住む方々の人権状況を少しでも改善する活動につながると思っています。
 お集まりのみなさん!
 私たちは、朝鮮高校生に無償化が適用されるその日まで戦い続けます。
 国連人権勧告実現のために共に手を取り合い、私たちの力で勝利を勝ち取るためにがんばっていきましょう。

=====

・精神障害者が直面する問題
  山本眞理さん(全国「精神病」者集団会員)
        (世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク(WNUSP)理事)

 日本の精神病院の病床数は世界一、そして平均入院日数も世界一です。
 病床数は約30万床、なんと約20万人が1年以上入院、さらに20年以上入院している方が3万6千人以上います。一方刑事施設は約定員6万5千人、無期囚は2000人もいません。日本は精神障害者を犯罪者以上に大量に長期に渡り隔離収容している国です。日本は収容所列島と言っていいのです。
 さらにメディアでは毎年入院患者への虐待が暴露され、死に至るものも告発されて今年も看護師が傷害致死で逮捕もされています。
 国連人権委員会は日本政府報告書審査のたびに、入院中心から地域での医療支援体制への転換を求め、拷問等禁止条約委員会とともに、精神病院を監視する独立した機関を求めてきました。
 しかし政府は一向に勧告に従う政策を取ろうとしていません。
 日本政府は障害者権利条約を批准しました。条約はすべての精神病院への強制入院精神障害者への強制医療の廃止を求めています。
 しかし政府のこの間の政策は強制入院を減らすどころかむしろ強制入院を増やしていく方向であり、全く逆方向の政策をとっています。実際強制入院は毎年増え続けており、新規の措置入院はこの25年間で3倍以上となっています。
 政府は、強制入院は減らないにしても、適切な医療保障であり、短期間であればむしろ精神障害者の利益となると開き直っているのです。
 さらに独房への監禁である隔離や、ベッドに体を縛り付ける身体拘束は増え続けています。
 精神障害者に対しての差別立法も相次いでいます。運転免許の取得・更新への制限、事故を起こした時の精神障害者のみに対する重罰化、秘密保護法の適正調査における精神疾患の明記などなどです。
 障害者権利条約は今までの人権条約にない、国内監視機関が条文で明記されています。
 しかし政府から独立した国内監視機関も作られていません。障害者政策委員会がその監視の役割を果たすとされていますが、そこには知的障害者も精神障害者も委員とされていません。
障害者権利条約の完全履行のためにも、今までの国連人権勧告実現のためにも、国内人権機関と選択議定書の批准は必須です。
 様々な被差別者の団体、人権団体とともに、私たち精神障害者もまた人権勧告完全実現、国内人権機関の創設、選択議定書の批准を求めて共に戦い続けたいと考えています。
 共に頑張りましょう。

=====

・教育現場への政治介入
  新井史子さん(東京・教育の自由裁判をすすめる会)

 今から12年前の2003年10月23日、東京都教育委員会は卒業式・入学式などの学校行事における国歌斉唱時の起立とピアノ伴奏を教職員に義務づけ、従わない者は処分するという通達を発しました。処分を振りかざしての国旗・国歌の強制。私たちはこれは教育の戦前回帰の始まりであり、生徒を再び戦場に送り出す道へとつながると直感し、国歌斉唱時に起立しないという不服従の道を選びました。40秒間の静かな着席のために処分を受けた教職員は2015年4月現在合計474名に達しています。
 私たちが12年前に予感し、危惧したことは予想を超えるスピードで現実となり、遂に戦争法案まで通ってしまいました。2006年の教育基本法改悪以来、教育現場への国家および地方行政の露骨な介入がものすごい勢いで進んでいます。日の丸・君が代の強制は小中高に留まることなく、今や国立大学にも及ぼうとしています。道徳も教科化されました。教科書に目を転じれば、従軍慰安婦に関する記述が消え、教科書検定では政府見解に基づく記述が強制され、侵略戦争を肯定する育鵬社や自由社の教科書の採択を有利にするための政治的な画策がなされています。自衛隊もどんどん教育現場に入り込んできており、都立高校の宿泊防災訓練では、生徒が自衛隊施設での訓練に参加させられています。彼らは日の丸・君が代強制を始めとする様々な管理強化制度の矢継ぎ早やの導入によって物言わぬ教師を作り、生徒に愛国心をすり込むことによって、戦争を受け入れる人づくりをもくろんでいるのです。
 しかし、私たちはそのような攻撃の中でも地道な闘いを続け、一定の成果を収めてきています。日の丸・君が代強制反対の各種裁判では、今年に入って地裁・高裁段階ではありますが、私たちに有利な判決が続々と出されています。
 また、私たちは裁判と平行して、2008年以来国連へもこの問題について訴えを続けてきました。2014年1月25日にこの場所で行われたこの同じ集会で、私たちの問題が自由権規約委員会の第6回日本政府審査のためのリスト・オブ・イシューに取りあげられたことをご報告しましたが、その年7月の総括所見ではそれに呼応する形で「思想・良心・宗教の自由」に関する勧告パラグラフ22が出されました。都教委や各省庁との交渉など、この勧告を生かすための活動も続けられています。私たちはさらに具体的な表現の入った懸念・勧告の獲得を目指して国連へのアピールを持続する予定です。
 様々な人権侵害と闘っているこの場に集まられた多くの方々と共に、今後とも活動を続けていきたいと思います。共に頑張りましょう。